堀田茜が「30代になってなんだか気になる…」と感じるタイムリーな話題を、今会いたい識者に直接聞きにいく連載17回目。この話、ほったらかしにしなくて良かったと思える日が必ず来るはず!
結婚すると主に女性だけが大変な手続きを強いられることを身をもって実感中…
今月のゲストは…一般社団法人あすには代表理事・井田奈穂さん
【今月の茜のモヤモヤ案件】
選択的夫婦別姓制度の法制化についてたびたび世間で大きく話題になるのに実現されないことが疑問に思います。なぜ実現されないのか。今、私たちが考えられることやできることはあるのでしょうか?
「名字を変更するのってこんなに大変なんだ…と実感中」(茜)
茜:4月に結婚したのですが、選択的夫婦別姓ってまだ実現されてないんだなぁと自分ごととして改めて思い至りました。名前を変更するのに一体いくつの手続きをしなきゃならないんだろうと気が遠くなるほど、やることがたくさん。そんなときに選択的夫婦別姓の実現化に向けて活動されている井田さんのことを知って今回はお越しいただきました。
井田:まず知っておいていただきたいのが、私たちが目指すのは望まない改姓をゼロにできる〝選択的夫婦別姓制度〞で、夫婦同姓を否定してはいません。同姓、別姓、どちらも素晴らしい。男女平等に、能動的に名前を選ぶことができる未来です。
茜:そうですよね。少し前に反対派の政治家さんが「家族の絆が壊れるから」とコメントされてましたけど、みんなが別姓になるわけじゃないのによくわからないなと思ったんです。実現化させることのなにがそんなに難しいのか調べても、それも理由がわからないんですよ(ここに書ききれないほど井田さんに細かく説明していただいたので、読者のみなさんはぜひ井田さんのことや制度についてウェブ検索してみてください)。
井田:ものすごく簡単に流れを伝えると、日本も明治初期までは夫婦別姓制度でした。1898年に西欧のキリスト教の国々の法律を参考に夫婦同姓を導入。同時に女性は法的に無能力、戸主(家長)である男性に従うとする「家制度」が始まりました。だから夫婦同姓制度は古い伝統ではないんですよ。1947年に家制度が廃止されても夫婦同姓は強制のまま。女性が9割以上改姓する状況が続いているのは女性差別を助長しているとして「お互い改姓しない」選択肢も追加しようという法改正が1996年に答申されました。でもそれから30年近く、法改正は阻まれているのが現状です。
茜:夫婦別姓を選べないのってもう世界中で日本だけですよね。
井田:そう。だから国連から「女性差別撤廃条約に違反している」と何度も勧告されています。日本は2006年からもう6期も人権理事国を努めているのに、その勧告を無視し続けているというのはすごく恥ずかしいことです。
茜:私ひとりがなんとコメントしたらいいかわからない規模の話で、言葉が見つからないです。私は芸能の仕事を続ける限りは旧姓を名乗り続ける場所があって助かるしうれしいんですけど、そうはできない人も多いですよね。
井田:芸能界は一度名乗り始めた名前は「ブランド」として尊重される業界ですよね。おっしゃるとおり、戸籍上の名前でないと仕事ができない職種の人も多くいます。独身の頃の名前でたくさんの成果を出したのに、結婚して姓が変わったせいで同一人物だと気づいてもらえずキャリアが分断されてしまう人もいます。最高裁の女性判事でさえ改姓によって「どこの馬の骨かわからない」と言われた実例があったのですが、当事者でない男性裁判官たちが「名前の変更で苦痛なんかない」と判断し、違憲ではないとされてしまったこともありました。
茜:ここまで露骨な男女不平等の話にまで繋がるんだなと驚いています。
井田:余談ですが、このまま夫婦同姓システムが継続し、日本の人口減少も止まらない場合、2531年には日本人全員が佐藤姓になるというシミュレーションの結果があります。夫婦別姓制度を実現化するメリットは女性だけのものと思われがちですが、男性にとっても大きな問題なので、危機感を持ってもらいたいです。
茜:そんな私たちに今できることなんてあるんでしょうか…。
一般社団法人あすには代表理事・井田奈穂さん
奈良県生まれ埼玉県育ち。自身の改姓の手続きの苦労をきっかけに、2018年に「選択的夫婦別姓・全国陳情アクション」を設立。2023年に法人化し選択的夫婦別姓の実現とジェンダー平等を目指し活動中。約800人のメンバー登録者と地方議会・国会に選択的夫婦別姓の法制化を働きかける。2025年までに実現するため、国連女性差別撤廃条約に基づく日本審査にもNGOとして参加予定。
〈堀田茜さん衣装〉ブラウス¥26,400スカート¥27,500スカーフ¥11,000(すべてアルアバイル)パールブレスレット¥10,290ゴールドブレスレット¥5,250(ともにアビステ)※井田奈穂さんの衣装は私物です